2014年8月30日 (土)

リーダー論

成功体験よ、さようなら

成功体験はずっと酔いしれていたいものであるが、そうもいかない。成功は将来の縛りとなるのである。それはなぜか?成功=驕り?否、成功すると、その経験を金科玉条にしてしまい、いつまでもその方程式で考えてしまう。時代が激変しても、変わることができなくなるのである。「あのときは」や「いつかは」などの過去への回帰と希望的観測が出てきたら要注意である。これは成功が重石になっている証左である。

真に強い動物は体力的に強い動物ではなく、「順応できる動物」である。そのような意味で人間はまだ最強ではない。DNAの二重らせん構造を発見したワトソン教授によると、最も順応性が高い最強の生き物は「バクテリア」だそうだ。

どのような環境でも順応できる力を経営者も養っておくことが重要。

日本は特に失敗を認めない国。このマインドをどう変えるかが強い企業、国を創るキーポイントになるであろう。

9.座標軸

座標軸は的確な判断や、人生の中で絶対不可欠なものであるが未来永劫不変ではない。むしろ時代によって変化し、それに自らが合わせていく努力こそが大切である。

とはいえ、不易流行という言葉がある。いつの世にも変化してはいけない軸がある。それらは、

   フェアーさ

   透明性

   機会の平等

であると考える。

昨今の日本は企業も国家も座標軸がない。この理由は明快である。例えばアメリカは政治、経済、軍事のどれを取っても世界最強であり、超大国の資質があるが、日本は分不相応に成長したおかげで「拝金主義」が首をもたげた。拝金主義からは、美徳やビジョンは生まれず座標軸がなくなってしまうのである。

極めて示唆的な言葉を1つ。

塩野七生「文明の長所はあるときから短所へと変わる」

日本の成長を支えた、輸出、護送船団、社会主義的集団性(ムラ社会)年功序列などの政策や制度が疲労している。これが足かせとなり、変化に遅れる現実が今、ある。

アメリカもしかりで、自由化、競争、自然淘汰、オープンさなどの価値が過剰となることで短所となり、サブプライム危機やバブル崩壊を引き起こし経済の機能不全を起こしていることは興味深い。

10.社風を創る

社風は文化であり、社風を見ればその会社の文化がわかる。山本七平「空気の国」は示唆的である。一度、空気に支配されると、NOとは言えず一方向に流されてしまう傾向が日本は強い。これは立派な文化であり、文化遺産、DNAである。組織には必ず生まれてくるものであり、その文化に染め抜こうとするのである。ワンフレーズで、文化を見ると、

①若手重視(野村證券)

②現場主義(ホンダ)

③ボトムアップ(新日鉄)

が好例であり、これらは年月を経て生まれた文化である。

社風も経営資源である。

経営資源は、人、金、物、情報などが一般的あるが、この社風も経営資源である。創業者、それを継いだ人の意識やポリシーが反映されているのが社風である。社是や社訓は一日あればできるが、社風はそうはいかない。風雪に耐えて初めて生まれる資源である。

社風は、幅広く包括的に以下の事柄を含む。

   役割

   責任・権限

   利益・コスト意識

   対人関係

   営業手法

   会議・報告手法

である。我々が空気を意識しないように社風も意識されない。しかし、これは文化遺産であるので「社風の意識化」が大切になる。これを考えさせる場が、各層での研修なのである。

11.大企業病をいかに避けるのか

組織が滅びる原因

   同質化

   過剰対応

   成功体験への埋没

右に倣えでは革新は生まれない。そして外部への意味のない過剰反応は自分の座標軸を失いかねない。そして成功体験は変化を拒否する力として働きやすくなる。

それを防ぐために

   トップがビジョンや戦略を設定

   敏捷性、機動力

   若返り

ビジョンや戦略は組織、個人に夢と希望を与える。機動力は対応力の強化と柔軟性を生み出ししなやかな組織を作る。若返りはソニーの盛田が得意であったが、「血液循環」をよくする最良の方法である。

これらが、大企業病を防ぐ効果的な方法となる。

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2014年8月29日 (金)

リーダー論⑦

問題を提起する

まずは現状を否定するところからリーダーは入ることが肝要である。現状満足は衰退を表すのである。そして、問題の発見や改善はマネージャークラスの仕事であり、真のリーダーシップは問題を提起することから始まる。

変革は容易ではない。まずは現状維持派が既得権益を有しているためにまず抵抗を始める。企業組織はできたてが最高であり、そこから酸化が進み、どんどん活性酸素に蝕まれる。わかっていながらも、その現状を肯定してしまう。

現状維持を打破する人は究極的にはトップである。これは、太平洋セメント相談役の故・諸井虔氏が小生に伝えてくださったことである。「日本的集団主義の中で、トップ以外が革新的なことを行えば、まず袋叩きになる。企業規模を問わず、変革や革新は企業トップの変化、変身を意味するのである。例えば、取締役会で全員賛成は絶対やらず、全員反対は一考するのである。」

もう一人、佐藤安弘氏(キリンビール相談役)。佐藤氏はキリンビールの高崎工場を閉じるなど大リストラを行った。アサヒのスーパードライが出てきたために変革の起爆剤になった。このように危機に直面すると目の色を変えて、変革に挑むが、普通はまだ大丈夫と油断してしまうのが人間の性である。

敢えてリスキーな行動をトップは取り、社員の危機感を煽ることが重要。このような意味で、リーダーシップは従来の根回し型から問題提起型に変貌しなくてはならない。

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2014年8月28日 (木)

リーダー論⑥

マイナス情報の吸い上げ

地位が上がると情報量が増えるが、それは都合のいい情報であり必ずバイアスがかかっているものである。真の情報は現場にあり、上のものは進んで話を聞く姿勢が大切である。裸の王様にならないようにするための方法として、

   自ら進んで現場に出る、そのときは抜き打ちで。

   マイナス情報を聞く度量を持つ。

   参謀を持つ

いつのまにか茶坊主に囲まれ、都合のよい情報だけで判断してしまうのである。

椅子にもたれて報告を聞く時代は終わり、率先して下へ動くことが大切である。動かないリーダーのもとには「癌」が発生する。組織として、

   素直に聞かない

   叱らない

   タブーばかり

   決定しない

   目線が上向の「ヒラメ社員」

   説明上手で動かない

こうなってくると、裸の王様になってしまう。

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リーダー論⑤

5.ノーブレス・オブリュージュ

日本語で訳すと「貴人の責務」。即ち、地位が高い人ほどその重責と義務を負うということである。これは貴族の言葉で、欧州の貴族は戦争となれば、まず先陣を切って国家のために戦うことを義務となした。上に立つ者が、その義務を放擲してしまえば、その国家は滅びる。これは企業にも当然当てはまる。

企業人は「法律に触れていなければ何をしてもいいのか?」ということを考えておかなくてはならない。権力者には、法律を超えた「倫理」が求められ、地位を利用して得たものは賄賂と考えるべきである。そのような姿勢は、下の者が良く見ている。

貴人の責務を実践した人

渋沢栄一「片手に論語、片手にソロバン」

天谷直弘(電通総研元社長)

野淵三治(日本ガイシ元社長)

大星公二(NTTドコモ初代社長)

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2014年8月27日 (水)

リーダー論

1.      権力の自制

権力を信じ、かつ疑うという姿勢が良きリーダーを生むのである。この二律背反を生き切ることがリーダーである。

社長を長くしていると、反対意見が憎らしくなる、そして排除へ動く。これが権力の魔物である。トップは孤独であり、最後は自分が決断する故に、自分と似た考えの者を重用する。これが結果、秘書室、管理部門の肥大化、自己増殖。これが組織の癌となり、腐らせるのである。

権力が正しく作用するために、

   コンプライアンス(罰則付き)

   労働組合

   社外重役(広く外部の目)を入れることが有用である。     

特に中小企業は社外重役は稀であるが、「商店」から「企業組織」へ脱皮し、永続する企業へはこのような存在が入ることが大切である。社外の目が入ることで、上も下も緊張感が出る。議論が活発になるなどの効用が出る。

神へ祈る

これは宗教ではないが、やはり自己の判断が正しくあれと人智を超越したものに祈る謙虚さは大切である。自信を持つことは大事、しかし過信は敵である。自己が万能と勘違いしたときから、そのような心が消えてしまう。

中條高徳「神への祈りが究極のボトムアップ」

池田勇人は閣議中、合掌をしていた。

速水優「神よ、変えることができるものには変える勇気を、変えることのできないものには受け入れる冷静を下さい。そして変えることができることとできないことを識別する知恵をください」(ニーバ)の言葉を机に置いていた。

橋本徹 キリストを拠り所にして、「住専国会」を全国銀行協会会長として乗り切った。

リーダーも自分の判断、決断が完璧ではない。人間を超えたものを敬う気持ちを忘れると狐付き状態や盲目的な権力者になる。

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2014年8月26日 (火)

リーダー論

1.      権威と権力は違う

えらそう、と偉いの違い

権力は地位につく、権威は人につく

権力依存は、虎の威を借る狐になりかねない。

権威を高めたいなら逆説的だが、権力の乱用を抑えることである。過去の名財界人はそのような覚悟を持っていた。

石坂泰三(東芝)、木川田一隆(東京電力)、諸井虔(太平洋セメント)、平岩外四(東京電力)、土光敏夫(東芝)

反対に権力依存で来た人間は、最後は失墜する。磯田一郎(住友銀行)中内功(ダイエー)などは好例。

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2014年8月25日 (月)

リーダー論

1.      人間的魅力

これだけは付け焼刃では身に付けられないものである。知性は本を覚え、格言を言えばそれなりに格好はつくが。その人の人生観、生き方が出てくるものである。またどのような教育を受けてきたのか、囲まれてきた友人、家族、師、などの影響も多大である。

最高の魅力とは→「飽きがこない」人間。あたかも美味しい食事、酒、美術品のようなもの。

高碕達之助「2代目は1に紳士、2にケチ、3にビジョンなし、4に人間不信、5に度胸なし」

呂新吾の人物鑑賞

   大事難事に担当を見る

   逆境順境に襟度を見る

   臨喜臨怒に涵養を見る

   郡行群止に識見を見る

困難において、人の耐性の力量がわかる。逆境、順境の身の処し方で度量がわかる。喜怒哀楽の中で教養がわかる。集団の中で正しい判断ができるかの見識がわかる。

人に気に入られる資質を可愛げというが、これはなかなか万人に備わっている資質ではない。歴史的には豊臣秀吉であろう。天賦の才である可愛げは備わっていないにしても、「律儀さ」は真似できる資質であろう。マメに訪問する、手紙を書く、食事に誘う、御礼を必ずするなどは少しの努力と時間のかけ方でいかようにもできる。

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2014年8月24日 (日)

リーダー論①

世の中に「リーダーシップ」についての本は数々あれど、どれも考え方がまとまっているわけではない。むしろ、リーダーのスタイルは千差万別である。しかし、リーダー学は自分がリーダーになったときに学ぶのでは時、すでに遅いのである。ここがリーダー育成やリーダー論の難しさである。30代、40代から「リーダーとは」を問い、突き詰めていく癖を養成しておくことが重要なのである。

1.      言葉の重み:「言葉の杖」

「悲観は気分、楽観は意志」

「経営は人の掛け算なり」

決断は複眼で

「節」を自覚しろ

リーダーは言葉に敏感であるべきである。言葉は世相を鋭く切り取る、そして時代のトレンドを示す。感性も大切だが、それを表現する言葉がなければならない。

昨今の経営者は言葉への執着が浅い、本質を捉えきれていない。一言で自社、自分、社員をどう表現するのか?

自分が不安なとき、悩んだとき、座右の銘があるのとないのでは、軸のブレが違う。

哲学→信念→言葉

至言を持つ

始めに言葉ありき

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2014年8月23日 (土)

丹波實が語る北方領土問題

1.1951年のサンフランシスコ平和条約で日本が放棄した「千島列島」には4島は入っていない(1855年日露通好条約、1875年樺太千島交換条約)。

2.ソ連はサンフランシスコ平和条約に署名せず、従って、別途、日本はソ連と1955、56年の2年間かけて、平和条約の交渉をしたが、ソ連は返還を認めず、このために、平和条約の交渉を継続することを明文化した上で、共同宣言という文章で戦争状態を終了させた。これが1956年の日ソ共同宣言である。その後、日本は一貫して4島の問題が日露の懸案であるとして要求してきたが、ソ連時代には、一貫してソ連側は、日ソ間にはそのような懸案はないとの立場を取り続けた(なお、上記の56年の共同宣言には、平和条約の締結の際には、歯舞、色丹は日本に引き渡すと書かれていた。従って、問題は国後、択捉のことである)。

3.1991年ゴルバチョフが訪日した時に、海部総理と何回にも亘る10時間以上の交渉の末、共同声明の中で、4島の名前をはっきり書いて、これが日ソ間の領土問題の懸案であると認めた。しかし、どのように解決するかについては、何らかの方向性も示されず、これがゴルバチョフの限界であった。

4.1991年、ソ連が崩壊してエリツインがロシアの大統領になり、93年10月に訪日した時、エリツインは、4島の帰属問題を歴史的、法的事実、法と正義などに基づき解決するとの共同声明に署名した。これは誠に歴史的な文章であった。

5.この後、橋本政権になって、97年11月、有名なクラスノヤルスク会談で、橋本/エリツイン間で、東京宣言に基づき2000年までに領土問題を解決するために真剣な交渉をするとの合意が達成された。

6.更に、98年4月には、これも有名な川奈会談が両者の間でおこなわれ、橋本総理より、「若しロシアが平和条約の中で日本の4島の主権を認めると明記するのであれば、別途合意するまでの当分の間、ロシアの4島の統治を認める」との趣旨のいわゆる「川奈提案」を行った。エリツインは大変に乗り気であった。

7.しかし、エリツインの健康問題、橋本総理の退陣などがあり、90年時代がここで事実上終わり、プーチンの時代となる。プーチンは2000年9月の訪日で東京宣言を有効だとしながら、01年3月のイルクーツク声明では、東京宣言と1956年の日ソ共同宣言の有効性に同意はしたものの、その後「日本が問題にしている4島に対する主権はロシアにある。このことは国際法的に確定しており、第二次世界大戦の結果であって、交渉の余地はない」(05年9月)と宣言した。このような路線はメドベージェフ時代も続く。その間、日本では2島返還論、面積折半論、元外務次官谷内正太郎の3.5島論が出る。日本の中がガタガタであるとの印象をロシアに与えた。

8.2010年11月にこれまでのソ連・ロシアのトップとして始めてメドベージェフが北方領土を訪問した。その前の、9月の末にメドベージェフは北京へ飛んで、胡錦濤との間で、対日戦勝を記念する共同声明を発出し、領土問題での相互支持をも約した。ロシアがこのような強硬な態度を取り出した一つの理由は、民主党政権が対米関係をおかしくしたために、中国、韓国、その他の国々が日本に強気に出ているのをロシアがじっと見ていたからである(問題は民主党のみにある訳ではない。自民党政権下でも、麻生外相が06年に衆議院外務委員会で前原議員に面積折半論についての考え方を質された時、明確にこれを否定せず、あたかも受け入れが全く不可能ではないとの印象を与え、また同人が総理の時に、09年2月サハリンでメドべージェフと会談の後、日本人記者団に「政治的妥協論」を述べたこともある)。

9.今やロシアは「平和条約的不要論」を言っている。これは、要するには平和条約がなくても日露関係は発展している、というものである。しかし、このロシア側の主張は、上記で触れた56年日ソ共同宣言が、平和条約の交渉の継続を明文で規定していることからして、国際約束違反である。また、最近ロシアは「敵国条項」をしきりに、しかも堂々と持ち出している。国連憲章には日独伊などを対象に安全保障面で差別化する「旧敵国条項」があり、107条が有名だ。107条は「第二次大戦の結果としてとる行動の範囲内」なら旧敵国に特別のことができる、とする時代錯誤的な条項である。日本やドイツが時代錯誤的条項として削除を要求し、95年12月に国連総会で、これらの条項は「もはや時代遅れである」とする決議がロシア、中国を含む全会一致で採択された。ところがロシアは、今は北方領土不法占拠の論拠にこの「敵国条項」まで持ち出して実効支配の正当化に励む。もっとも、ロシアは以前からこの条項に言及することはあった。しかし近年ほどの、ここまで厚顔な猛々しい押し出しはしなかった。

10. 北方領土問題でロシアがゴリ押しを続けるなら、日本も意地悪く返してもいい。サンフランシスコ平和条約で日本が放棄させられた千島・南樺太について、そのロシア支配は国際法上に根拠がない。まずこのことをロシアに指摘することについて日本国内で議論を始めてもいいのではないか。日本の放棄がロシア帰属の意味とはサンフランシスコ条約には書いていない。第一、ロシア(当時はソ連)はあの条約に署名もしていない。

11.さらに4島における共同経済活動の問題もある。共同経済活動という怪しげな動きが憂慮される。10年11月のAPEC(アジア太平洋経済協力)は横浜で開かれた。この際の日露首脳会議でロシア側から提起された。この問題は新しいことではない。まだソ連時代の1991年4月、ゴルバチョフ大統領の訪日の折にソ連側の高いレベルから提起されたのが最初ではなかったか。その後若干の変遷を経て、98年11月の小渕恵三総理の訪露の際に「国境画定委員会」とともに「協同経済活動委員会」が作られた。しかし、どちらの委員会もあまり成果のある活動はできず結局休民状態になって今日に至っている。最近のロシアの動きも、この古証文にアイロンをかけて出直した変化球そのものだ。
 ロシアが4島での共同経済活動という時は、ロシアの管轄権を当然の前提としている。この点はラブロフ外相が「ロシアの法律の下で行われる」と何度も明言しており、この問題には中間的なことはあり得ない。昨年12月のハワイでのAPEC首脳会議の際に行われた日露首脳会談の直前にメドベージェフ大統領はハバロフスクでの地元記者団との会見の時に「北方領土での日本との共同活動条件作りを今すぐ行う用意がある」と語っており、ロシア側は今後ともあらゆる機会、あらゆるレベルでの会談で、この問題を取り上げてくるものと予想される。日本側は絶対この提案に乗ってはならない。それは上記のラブロフ外相の発言で明らかであり、中間的なものなどは出て来はしない。

12.今年の31日、プーチンは、4日の大統領選挙の前に、外国人記者とのインタ

ビュをした時に、その中にいた朝日の若宮啓文主筆に対し、自分が大統領に復帰した場合に、日露間の領土問題を2島の引き渡しで決着させようと示唆したが、若宮氏は、このインタビュウの中で、2度にわたり、2島だけでは「日露間の引き分け」(プーチン)にはならないと反論した。また、31日付朝日新聞の論説の中で、「北方領土問題、プーチン氏意欲、ボタンかけ直す時だ」との論説を載せ、ここでも「2島では引き分けにならない」とプーチンが示唆した「2島で決着論」に賛成しなかったことを紹介し、4島でボタンをかけ直すことを論じるとともに、同時に、「プーチンに過大な期待を持つことは禁物だとも言っている。

日本には、2島返還論、2プラスα論、3島論、35島論、面積折半論などが並んでおり、まるでバナナのたたき売りのようである。国家にとって一番重要なのは、領土、領海、領空の主権であって、これについて可笑しな妥協をすれば、世界の笑いものになる。こんなことをしていれば、そのうち中国や台湾が実は沖縄も元は中国のものと言い出すのを恐れる。現に714日に日本のある新聞が現職の中国の軍の高官が「沖縄はかって中国の属国であった」と発言したと報じている。

日露首脳会談が6月メキシコで行われたが、ここで「始め!」の号令がかかったのかが

ハッキリしない。日本側は、両首脳間で「日露平和条約交渉の再活性化」に合意したと発表したが、実はそのような言葉が会談では使われていなかったことが後日分かった。何か前進があったように見せかける日本のケチな外交スタイルにウンザリするのみ。この会談後の7月の初め、メドベージェフ首相が国後を訪問した(2010年は大統領として、今度は首相として。勿論プーチンとは打ち合わせ済みの筈。本当は択捉に行くはずであったが、天候の都合で、再び国後に行ったと言われる。いずれにしても、国後、択捉を日本に諦めろとの強いシグナルを送ることが目的)。この国後訪問の時のロシア人記者の「日本の反応をどう見るか」との問いに対するメドベージェフの口汚い、そんな質問に答えること自体が時間の無駄使いだと言ったような言葉は酷すぎる。

 上記のような問題に加え、8月中旬には韓国の大統領が竹島を訪問するという事件と、香港民間活動家が尖閣に強行上陸する事件が相次いで起きた。韓国の大統領が竹島を訪問するなどの事は今までなかったことで、日本でも相当の事件として報道された。中国では彼らの行動を支持する報道が相次いだ。ロシアの北方領土に対する強硬な態度とも合わせてみると、日米関係が鳩山政権によって滅茶苦茶になり、今日に至るも関係が修復しておらず、また民主党の政権も弱体で、また、最近数年間の日本を観察すれば、日本は領土問題では弱い国というイメージが周辺国に出来て、露・中・韓が今や日本を領土問題で追い詰める大きなチャンスと考えているとしても、驚きではないと考えられる。

13.最後に一言だけ加えたい。150年くらい前にイギリスにパーマストンという有名な政治家がいて、彼は外務大臣をやり首相も2回やった人物。彼が死ぬ前に残した有名な言葉が「この世に永遠な友好国はない、永遠な敵国もない、唯一永遠なのは自国の利益」。彼は何を言をうとしたのか。

彼が言おうとしていたのは、国際情勢は動くと言うことだ。北方領土問題を例にとると、今後102030年、否今後50年、ロシアを巡る国際情勢はどうなるか。中露関係を一つとっても、どうなるか分からない。ロシアにとってかって最大の武器のマーケットは中国であったが、09年、10年、前年比で40%、47%減り、今や一番のマーケットはインドになった。極東の人口を取れば、かつて800万いたロシア人は600万に減少し、今や100万の中国人が極東に住んでいると言われる。中国の経済はこれからも成長が期待され、これに対してロシアの経済の近代化の先は暗い。ロシアはいずれ中国にとってジュニアパートナーでしかなくなる時代が来るかもしれない。その時ロシアは初めて日本の重要性に本当に気が付く。可笑しな妥協をして世界の笑いものになるよりは、ここはじっくりと腰を落ちつけることが重要。今は我慢と忍耐の時期だ。 

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2014年8月22日 (金)

怖い話

BIS論壇 No.124「米国家安全保障局(NSA)の産業スパイ活動問題」201485

                                 中川 十郎 

  NSAによる個人情報収集活動を暴露し、ロシアに亡命中の米中央情報局(CIA)元職員スノーデン容疑者は126日夜、ドイツ公共放送ARDが放送したインタビューでNSAは米国家安全保障上の目的だけでなく、競争が激化するグローバルビジネス戦争で産業スパイとしても活動していると証言し、NSAがビジネスインテリジェンスなど経済情報も収集しており、米国が外国の企業に対してもスパイ活動をしていることは間違いないと断言したという。また「メルケル独首相の携帯電話だけでなく彼女の側近や大臣を監視していないとは考えにくい」と指摘し、多くの人物の携帯が盗聴されていたとの考えを示した。

127日、日経夕刊、128日、朝日新聞)131日付け日経によれば、クラッパー米国家情報長官は29日の上院情報特別委員会での証言でCIAスノーデン元職員に「米国の安全をさらに損なうのを防ぐために、まだ暴露していない盗んだ文書の残りを返還するように要求した」という。暴露によってテロリストらが米政府の情報源や情報収集の方法、技術を研究し、情報機関の活動は非常に困難になっていると批判。すでにテロリストなど敵側の通信の仕方に変化が見え始めており、「米国と米国民は以前に比べて安全でなくなった」と警告した。スノーデン氏は「NSAの機密情報はすでに自分の手元にはなく、すべて特定のジャーナリストに提供した。何を報じるかは関知していない」と説明したという。

そもそも悪名高い米スパイ組織、NSAが中心となり、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン5か国は第2次大戦後の早い時期から、通信盗聴システムECHELON(梯子の隠語)を活用し、地球規模の盗聴を行い、世界中の音声通信、ファックス、電子メール、最近は携帯電話、スマホなどを盗聴、分析、活用している。エシュロンは市民のプライバシーの侵害、私的通信の傍受、盗聴という人権上も深刻な事態を引き起こし、欧州議会はエシュロン傍受システム調査委員会を設立。2001518日に調査結果を発表。国際経済情報戦の実態を暴露し、世界に衝撃を与えた。傍受、盗聴の疑いのある基地は世界中に20か所あり、なんと日本の青森県・三沢米軍基地も傍受、盗聴基地に含まれていることだ。世界の諜報機関は冷戦終結後、経済分野の覇権をめざし、情報収集のターゲットを軍事情報から経済、技術分野に移し、世界では熾烈な経済情報戦が始まっていることを認識すべきだ。上記欧州議会の報告書では90年代に国際ビジネス分野で、主要な28の傍聴、盗聴例を取り上げて、注意を喚起している。日本関係では96年に米国製乗用車の対日クオータ交渉に際し、CIAが当時の通産省のコンピューターに侵入し、情報を当時の米通商代表ミッキー・カンターに流したケースや、日本製高級車の排ガス規制の情報を傍受するなど米国が情報を不正に入手したというダンカン・キャンベル氏の調査結果を公表している。このように日本の交渉情報は裸にされており、おそらくTPP交渉情報も米側に筒抜けになっていると思われる。

日本の政府、企業は今後、重要な外交交渉や国際ビジネス交渉においては暗号を使うなど徹底した機密保全に万全の態勢を固めることが肝要であることを銘記すべきである。

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